地球温暖化防止の為、自然エネルギーを利用した発電システムや、必要な時に必要な分のエネルギーを効率よく貯蔵・放出できる蓄電デバイスの研究開発が進んでいます。充電・放電を繰り返して使用する蓄電デバイスの中で、リチウムイオン二次電池(Lithium ion battery, 以下LIBと略す)は、単位体積と重量当たりのエネルギー密度が実用上最も大きい蓄電デバイスです。
もう一つ注目されている蓄電デバイスがあります。それは『電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor, 以下EDLCと略す)』というデバイスです。EDLCは、大電流充放電が可能で且つ際立ったサイクル寿命を有することが特徴です。CDケース位の大きさのデバイスから数100Aの電流を一気に放電したり、充電したりすることが可能で、何万回も充放電して繰り返し使うことが出来る蓄電デバイスです。
次世代蓄電システム
電気二重層キャパシタ(EDLC)とは・・・
- 低インピーダンス・低内部抵抗のデバイス
- 充放電効率が高くかつ急速充放電が可能
- 繰り返し使用しても性能劣化が少ない
- 重金属フリーかつ長寿命で環境に優しい
- メンテナンスフリー
EDLCは、高表面積材料と電解質の界面に形成される電気二重層(またはヘルムホルツ層と言う)に電荷を蓄えるデバイスです。
実用化されているEDLCは、表面積が1500~2500m2/g 程度の活性炭を電極材料とし、プロピレンカーボネート(PC)等の高極性溶媒に脂肪族四級アンモニウム塩(結晶固体)を溶解した有機溶媒か、あるいは硫酸水溶液を電解質として用いています。
EDCLの構造
電極間に電圧を印加すると、電解質中のカチオンは負極に、アニオンは正極に移動してそれぞれ電気二重層を形成し電荷を蓄積します。すなわち充電です。放電の場合は、カチオン、アニオンが電極材表面から脱離します。
EDLCの充放電は電子移動反応(化学反応)を伴わない非ファラデー過程であるので、化学的にエネルギーを貯蔵する二次電池と比較すると大電流で急速な充放電が可能であり、充放電に伴う損失が少なく、サイクル寿命が際立って長い特徴があります。これらの特徴を活かして自動車用の電源としての開発が進んでいます。
充放電メカニズム
1)充電開始
2)充電状態
3)放電開始
4)放電完了
イオンの脱着によって充放電を行い、化学反応は用いない
電池とEDLCの違い
→
化学物質A 化学反応 化学物質B
←
△充放電に時間かかる
△劣化しやすい
○たくさん貯められる
イオンの吸着と脱着で電気を貯める
物理反応
○速い速度で充放電できる
○劣化しない
△表面積で貯められる量が決まる=少な目
当研究室では、イオン導電性と不燃性を併せ持つ『イオン液体』を電解質に利用し、EDLCの性能向上を目指した研究を行っています。